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飼い猫様の窃盗 61

「飼い猫を逃がすなんて、あんたはダメな飼い主だ」

S君の写真が掲載されているチラシを見せるなり、私は、女性に説教をされました。
この説教は、S君の飼い主様からお話を伺ったのと同じでした。
よって、この女性はS君の飼い主様にお電話をした方と同一人物である、と私は確信しました。

私の手からチラシを奪うように取った女性は、S君の写真をまじまじと見て、眉根を寄せました。

「……ん? この猫はひょっとして……。あんた、飼い主じゃないだろう?」
「はい。実は私、S君の飼い主様にご相談を承っている者でして……」

これまでの経緯と事情を説明した私に、女性はいい放ちました。

「そのペット探偵とやらは、酷い奴だねえ!」
「仰る通りで、飼い主様が入院せざるを得なくなったのも、無理はないんです」
「そうだねえ……。そりゃあ、かわいそうだ……」

心の底から同情を寄せているように見える女性に、私は質問を重ねました。

「確認なのですが、お宅様は、毎日エサやリをしに来られているのですか?」
「答える前に、約束して欲しいんだけどさ」
「なんでしょう?」
「猫嫌いに見つかると面倒だから、内緒にするって約束だよ」
「口外は致しません。私はただ、S君の早期の無事発見・保護を願っているだけなので」
「ウソじゃなさそうだねえ。じゃあ、いうけど、これくらいの時間帯に毎日来てるよ」
「だから、みんな、人懐こいのですね」
「まあね」
「S君らしき子が食べに来たのを、見かけたことはありませんか?」
「……ないねえ。ここに食べに来るのは、みんな知った顔だよ。だけど、最近、数が減ったけどねえ……」

女性は、S君の飼い主様に伝えたのと同じ、”噂”の話をし始めました。
私は、聞きました。

「今までに、虐待された形跡のある猫様をお見かけしたことがあるのですか?」
「ない。ただ、確実に、近所の猫は減っている。少しずつならまだしも、一気に顔を見せなくなったからねえ……」
「数が減り始めたのは、いつ頃でしょうか?」
「ここ数ヶ月の間だよ」

たとえば、毒入りのエサがばらまかれていて、口にしてしまった複数の猫様がお亡くなりになっていれば、それは動物愛護法違反です。
事件化して、とっくにニュースになっていても不思議ではありません。

そのことについては、女性も私と同じ考えを持っておられ、愚痴をこぼされました。

「何者かに猫が捕獲されている証拠を掴まない限り、こっちがいくら”猫の数が減っている”と通報したところで、その程度じゃ、警察も動いちゃくれないからねえ……困ったもんだよ」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉