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飼い猫様の窃盗 62

女性はもう一度S君の写真を見つめ、私に宣言してくれました。

「とにかく、この猫を見かけたら、すぐに連絡するから」
「首輪だけでも見かけたら、ご連絡お願いします。今はとにかく、S君に繋がる情報を、飼い主様は心待ちにしておられるので」
「そうだろうねえ。分かったよ」

女性は自転車にまたがって、去って行きました。

女性がいう、猫様を乱獲している”何者か”は、後になって私が遭遇した男たちのことですが、この時点では明らかになっていなかったので、私も心配の限りでした。
とはいっても、お店に戻らなければならない時間が迫っていたので、その日はそれ以上のことが出来ずに、私も帰宅しました。

S君の飼い主様がお休みになっているところに電話を差し上げて邪魔したくなかったので、翌日のお昼過ぎに私は病室に伺いました。

「え!? 現地に行ってくれたんですか!?」
「はい。より的確なアドバイスを差し上げるためには、現地を歩いて、この目で確認しておきたかったので。実際の立地や雰囲気などは、地図上だけで判断するには、やはり限界がありますし」
「本当に……なんて御礼を申し上げたら良いのか。ありがとうございます! ありがとうございます!」

涙ながらに感謝の言葉を口にする飼い主様を見ていると、なんだか申し訳なくなってきて、私は言い訳で自分を繕いました。

「たまたま、時間が空いていて、勝手に行っただけなので、そんなに御礼をいわれると恐縮です。それよりもですね……」

私は、エサやリの女性について報告しました。

「……というわけで、目撃情報を装ったイタズラ電話の類ではありませんでした。ちなみに女性は、エサやリ後に、発泡スチロールトレイも含めすべて回収なさいます」
「そうですか。Sも、その女性がいる間にエサをもらいにくれば良いのに……」
「今までは姿を見せなかったとしても、今後、ふいにS君がエサを食べにくるかもしれません。その際は、女性から連絡を頂けることになっていますので。ただ、深夜帯になるかと思われますが……」
「構いません。電話に気づけるように、注意をしておきます」

ほんの僅かな情報であっても、希望を見出してポジティブに捉えている飼い主様の目には、確かな力が宿っていました。
こういった前向きな姿勢の継続を支えることが、俗にいう”ペット探偵”とは一線を画す所以であり、『迷子ペット様捜索パートナー』である私の役割の一つだと考えています。
なので、飼い主様がポジティブなのは、私としてもうれしいことでした。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉