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飼い猫様の窃盗 66

「目撃情報電話を頂けないのは、その人物の性格によるものだと思います」
「……どういうことですか?」

いいながら首を傾げるS君の飼い主様に、私は、考えの続きを話しました。

「公園のエサやリ女性と違い、野良猫様がエサを食べ終わるのを待ってアルミホイルを回収しない点からすると、その人物は、周囲の目を気にする警戒心がかなり高いといえます」
「その遊歩道沿いには確か、家が建ち並んでますものね」
「はい。それらの家と遊歩道との間に在るフェンスには、”野良猫へのエサやリは迷惑!”・”エサやリを発見次第、即、警察に通報!”などと書かれたいくつもの手書きチラシが、これ見よがしに掲示されています」
「見かけたことがあります。ちょっと異常な数のチラシですよね」
「おそらくは、過去、近隣住民とトラブルになったのでしょう。そのトラブルが原因で、エサやリ人物は、他人との接触を極力避けるようになったのかもしれません。だとすれば、たとえ猫様好きでS君を心配してくれていたとしても、目撃情報電話を頂けない現状に不思議さを感じません。電話をきっかけに、自分がエサやリをしていることがバレてしまうことを恐れているのでしょう」
「……なるほど。それにしても、トラブルを抱えているにも関わらずエサやリを止めないということは、その人物はよっぽどの猫好きですね」
「はい。だからこそ、少しでも人目に付きにくい時間帯にエサやリをしているのでしょう。とはいえ、深夜帯ではないような気がします」
「なぜですか?」
「私が見つけたエサの残量から判断します。先ほど申し上げた通り、アルミホイルの大きさからして、置かれたドライフードの量は、大して多くありませんでした。その代わりに、複数個所に置いているのでしょうが、それにしたって、深夜帯にエサを置いたと仮定すれば、午後には、ほとんどが食べられていていいはずの量です」
「いわれてみれば、納得です」
「なので、私としては、明け方の時間帯に捜索をさせて頂ければと思います。近隣住民とエサやリ人物のトラブルが、より悪化してもおかしくない状況です。となると、場合によっては、近隣住民の怒りの矛先が野良猫様たちに向けられる恐れがあります。よって、優先順位は一つ目の案より上かと」
「同じ意見です。お願いできますか?」
「分かりました」

こうして、明け方の時間帯に捜索を行ってから二日後、私はエサやリの人物の発見に至りました。
見た目から、三十代半ばといった印象の男性でした。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉