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飼い猫様の窃盗 69

私はフェンスに近づいて、アパートのベランダを確認しようとしました。

「今は、誰もいないと思うよ。大抵の野良猫たちは、オレがエサを置くのを待ってて、食べたら直ぐにいなくなっちゃうから」

エサやリ男性の発言に笑顔で軽く頷きつつも、私は雑草をかき分けながら足を進めました。
フェンス越しに覗くと、二つの段ボール箱とエサが置いてあるベランダが見えました。

こちらのエサはアルミホイルの上に置いてあるわけではなく、猫様用のフードボールに入っていました。
その隣には、容器に入った飲み水も用意されています。

「ほらね。エサはもう無くなってる」

いつの間にか私の真横に立っていたエサやリ男性は、ベランダの右端に置いてある段ボール箱を指さして続けました。

「こっちの駐車場側からは見えないけど、あの段ボールの中には、クッションを入れてあるんだ。屋根付きのベランダだから、野良猫たちが雨宿りしたり、昼寝場所として使ってる」
「そうなんですね」
「で、左端の段ボール箱の中には、猫用のトイレを設置してある。一応、隣近所に迷惑がかからないようにと思ってさ」

なるほど、猫様の排泄物の臭いがすると思いました。

「遊歩道の脇の草むらにも、猫用のトイレを置いてたんだけどさ、誰かが勝手に撤去したみたいで、気づいたら無くなってた。だから今は置いてない」

たとえ野良猫様たちの排泄物対策だとしても、自分の敷地でない場所に猫様用トイレを勝手に設置すれば、それはやはり問題となるでしょう。
私はそれを指摘しながら、エサやリ男性をやわらかく窘めました。

「まあね……分かっちゃいるんだけどね……」

エサやリ男性が感じているであろう後ろめたさから話を逸らすため、私は話題を変えました。

「ところで、ベランダに置いているエサの量は、遊歩道の脇に置いていらっしゃるそれと同じですか?」
「いや。遊歩道脇のは、近所の人にバレにくくしてるから少な目にしてる。その代わりに、置く場所を増やしてるけどね。ベランダのは、そうだなあ……大体、成猫五匹分くらいが一食に食べる量を置いてる」
「それだけの量を置いても、毎日、空になっているのですか?」
「そうだね。午前中の早い時間帯には、すでに無くなってる」
「今まで、何匹を目撃したことがあるのですか?」
「ベランダのエサ置き場で?」
「はい」
「最近はそうだなあ……このチラシの白猫以外で、平均すると五匹くらい。ちょっと前までは、もっと食べに来てたんだけど……。どこか、新しいエサ場を見つけたのかも。捜している白猫も、そっちに顔を出してたりして」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉