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飼い猫様の窃盗 72

懐かしそうに、けれど今現在も変わらず傍で暮らしているかのように語るエサやリ男性の目には、共に過ごした猫様との確かな思い出の日々が輝いていました。
穏やかさを交えた沈黙でその姿を見つめていた私に、エサやリ男性はいいました。

「それ以来さ、猫を飼うことは止めてる。まさかオレみたいな人間がなるとは思わなかったんだけど、ペットロスってやつなのかも」

愛猫様がどんな理由で天国へ旅立ったのか、エサやリ男性に詳細を尋ねることを私は控えました。
興味だけでいたずらに突いて、悲嘆を思い出させたくはなかったからです。

私が慮る一方、エサやリ男性は消え入りそうな声でいいました。

「かかりつけの獣医の話によるとさ、オレの猫は、生まれつき病気を患ってたらしいから、いつ死んでもおかしくはないっていう覚悟はしてた。それでも、いざ死んでいくのを目の当たりにすると、予想以上にきつかったなあ……」

私自身も、過去に同じような経験をもっているので、自ずと胸がつまりました。
その影響もあり、無難な言葉を見つけて対処することはしたくなく、ただただ想いに任せて頷くことしかできませんでした。

愛猫様を亡くした経験を持つエサやリ男性の想いは、S君の飼い主様に向けられました。

「それにしたってさ、オレの場合は猫を病気で亡くしたから、ある意味、まだマシだよね。看取ってやれたし。もちろん、単純に比較できることじゃないけどさ、自分の猫が迷子になって、行方不明のままの方がよっぽど辛いよなあ……」
「迷子ペット様捜索の様々なケースを経験してきた私も、同じ想いです。だからこそ、無事発見・保護に繋がるかもしれない情報を必死で集めるわけです」
「オレも猫好きだからさ、ほかに聞いておきたいことがあったら、なんでも聞いてよ」
「ありがとうございます。では、伺わせて頂きます。本当は、むやみに心配させたくはなかったので躊躇っていたのですが……」

エサやリ男性の心遣いに甘え、私は聞きました。

「実はですね、つい先日、ある方から、物騒な情報を入手したのです」
「……どんな内容なの?」
「『最近、近所の猫が虐待されているかもしれない』という情報です」
「えっ!? マジで!?」
「まあ、今のところ、あくまでも”噂”レベルの話ですので確たる証拠があるわけではないのですが……。そのことについて、心当たりがあればと思いまして。何か、ご存じではありませんか?」
「いやあ……虐待されてケガしたり死んでる猫とか、オレは見かけたことはないけど……」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉