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飼い猫様の窃盗 76

S君が向かった先とは真逆に身体を振り、私は茂みの中を進みました。
それを抜けた後、S君が向かったであろう方向(公園と道路の境に植わっている垣根を見通せる場所)まで移動しました。

予測は的中し、ほどなくして、垣根の間からS君が顔を出しました。
S君はそのまま公園を出て、道路を渡りました。

近づきすぎないように、かといって見失わないようにしながら私が尾行をしていると、S君は一軒のお宅の敷地内に消えて行きました。
時刻は深夜帯なので、インターホンを押して家主様にコンタクトを取れません。

その代わり、S君の行動は、動画でばっちり録画しておきました。
日中に訪問し、敷地内にS君が入って行く姿を録画したものを家主に見せながら、聞き込みをするためです。
場合によっては、捕獲器の設置が望まれるので、交渉の際にも役立つことでしょう。

とにもかくにも、これ以上の深追いは、S君の警戒心を刺激してしまう恐れがあるので、尾行は終了です。

私は考えました。
もしも、S君が食事を終えたのなら、どこかに確保している住処にこのまま戻って休んでしまい、この後に姿を現す確率は低いと思われます。
よって、S君が向かった先の把握だけに留め、今夜の捜索を終えることにしました。

翌日の昼過ぎ、私はS君の飼い主様が入院している病院を訪れました。
昨日までの捜索報告をしながら、S君の姿が映った動画を見せた途端、飼い主様の目には涙が溢れました。

「ありがとうございます! ありがとうございます!」
「見た感じ、どこかをケガしていたり、弱っていたりする様子は見受けられませんでした」
「本当に良かった!」

飼い主様が涙を拭えるまで落ち着くのを待って、私は続けました。

「およろこびのところ申し訳ありませんが……現状、まだS君を保護できたわけではありません。むしろ、ここからが難しいといえます」
「……そうなんですか?」
「先ほど話した通り、公園で猫様たちを乱獲している、例の怪しげな男たちの存在があるからです」
「ああ……」

残酷なようですが、懸念される要素を私が話すと、飼い主様の顔が一気に曇ってしまいました。
それでも、はぐらかすわけにはいかないので、致し方ありません。

「男たちは、公園内にいくつもの捕獲器を設置していました。それがどのくらいの期間続いていたかは分かりませんが、S君は捕獲器の中に入らなかったわけです。つまり、捕獲器に対して警戒心を抱いている、ということです」
「そうですね……」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉