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飼い猫様の窃盗 8

彼ら男たちは二人共に、猫様を捕獲してバンの中に積み込んでいることについて、少し前から私が様子見をしていたことまでは、まだ把握していないはずでした。
そうなると、今すぐこの場を離れることができない理由があるに違いありません。

それは、なんなのか……。

男たちの射るような視線に囲まれながら、私は理由を探しました。
結果、瞬間的にいくつか思いついたのですが、この状況で、そのどれをも問いただすことは困難です。

なので。
そのうちの一つの可能性に絞り込み、そのことの確度を図るため、彼らの心の機微を刺激してみました。

「ところで……お伺いしたいことがあるのですが」

会話の終結に応じない私の狙いに焦り、訝しさを抱いたのでしょう。
大柄の男の態度は変わりませんでしたが、やせ細った男の方が作っていた笑顔にわずかな綻びが生じたのを、私は見逃しませんでした。

その綻びを縫う暇を与えたくなかったので、私は刺激を重ねました。

「少しばかり、お時間よろしいでしょうか?」

詰問のニュアンスを多分に含む私の短い言葉と声色に、やせ細った男の作り笑顔はみるみる形を変え、ついには眉根を寄せています。
大柄の男はというと、このまま私を立ち去らせる流れでの収束を諦めたようで、余計な言葉を付け加えずに答えました。

「なんですか?」

低い声からは、威嚇や警戒の意味合いを充分に感じ取れましたが、私の方からしたって、今さら後戻りはできません。
大柄の男の目を真っ直ぐ見つめながら、私は、二の矢三の矢を放ちました。

「申し訳ありません。けど、良かった。あ、でも、もしかして、お急ぎなのでは?」

大柄の男は黙ったままで、動揺の素振りを見せてきません。
とはいえ、それはそれで想定内だったので、”自分勝手な性格の持ち主”というキャラ設定に素早くシフトチェンジした私は、

「まあでも、良かったです。いや、実は困っていたものですから」

と、強引に会話を転がしました。
続けざまに空っぽの笑みをたたえ、

「では、お急ぎでいらっしゃらないようなので、お時間頂を拝借させて頂きますね」

といいきり、ペースを握ることに成功しました。

”拝借”という言葉の意味が通じなかったのか、やせ細った男は少し頭を傾げていましたが、大柄の男には理解できていたようです。

なにはともあれ。
”自分勝手な性格の持ち主”というキャラ設定によって、男たちに返す言葉の隙を与えなかった私の作戦は功を奏したのでしょう。
上手く、大柄の男を焦らすことができました。

「で、オレたちに、なにを聞きたい?」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉