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飼い猫様の窃盗 84

緊張感よりも高揚感に包まれた表情を浮かべたエサやリ男性は、私からエサやリ場所を聞いて、茂みの中を出て行きました。
私は無事を祈りながら、着信音をサイレントモードにしたままのスマフォ画面に視線を落としました。
エサやリの女性からは、未だ連絡はありませんでした。

S君を保護するために仕掛けた捕獲器の様子は、どうなっているだろうか……。

捕獲器を設置させて頂いている家主様からの着信も、今のところありません。

エサやリ男性が茂みの中を出てからしばらくは、静けさだけが流れました。
その静けさにまとわりつくように、ふと、生温い風が吹きました。

その気味の悪さと同じくらい、男たちの気配も感じませんでした。

もう、公園内を出て、べつの場所で私を捜し回っているのだろうか……。

妙に気になりましたが、待機中の私に確認する術はありません。

とはいえ、何もせずに待つばかりでは時間の浪費になってしまうので、私はエサやりの女性に再び電話をかけてみようと思いました。
すると、スマフォの画面が点灯し、着信を知らせてきました。
表示されている電話番号は、非通知でした。

誰だろう……。
エサやリの女性なのか……。
エサやリ男性なのか……。
捕獲器を設置させて頂いている家主様なのか……。
はたまた、新たな目撃情報提供者なのか……。

いずれにも可能性があるなと思いつつ、私は電話を受けました。

「はい。もしもし」
「あの……迷子の猫のチラシを見て、電話したのですが」

電話の主は新たな目撃情報提供者だと思われる、男性のものでした。
しかしながら、です。
その男性のつぎの言葉で、私はなんとなくの違和感を覚えました。

「この電話番号は、飼い主さんのもので間違いないですか?」

一見すると、取り立てていうほどのこともない言葉に聞こえます。
ところが、殊に目撃情報電話の場合にはそうではないケースが多いことを、経験上、私は知っています。
ほとんどの目撃情報提供者は、チラシに記載している電話番号が飼い主様のものであるかどうかの確認について、電話の早い段階で聞いてきません。
迷子ペット様の心配が最優先で電話をしてきたが故、すぐに『いつ・どこどこで見た』といったような話を始めます。

用心を忘れない私が曖昧な返事をすると、電話をかけてきた男性は、さらに質問を重ねてきました。

「今、どちらにいらっしゃいますか? 迷子の猫の件で、早急にお話したいことがありまして……」

この内容に、私が抱いていた違和感は、一気に膨れ上がりました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉