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飼い猫様の窃盗 87

しばらくの無言の後、電話相手の男性はいいました。

「……分かりました。いいですよ。飼い主さんが来るまで見張ってます」
「ありがとうございます」
「こちらがいる場所の目印は……」

電話相手の男性の説明によると、公園からは少し離れた場所に位置するコインパーキング付近でした。
その周辺からは現状、S君に関連する目撃情報は一つもあがってきていません。

件のコインパーキングの位置を直ちに把握できた理由は、明るさです。
周辺には、いくつかの工場や会社が建ち並んでいますが、いずれも夜には人気がなくなります。
ですので、暗い夜道には、そのコインパーキングの明かりだけが目立つというわけです。

確か、コインパーキング前の道は一本道でした。
人通りがないということから、私が現地に着いた時、電話相手の男性を他人と見間違うことはなさそうです。

ということは、反対もまた然りでしょう。
つまり……。
電話相手の男性が、もしも私を捜し回っている男たちの一人だとしたら、この誘いは罠だということになります。
最悪の場合、男たち三人が待ち伏せしているのかもしれません。
そうなると、逃げ切れる確率は低くなるでしょう。

電話相手の男性との通話を終了した私は、矢庭に、エサやリ男性の電話番号をスマフォ画面に表示させました。

私からの電話を受けたエサやリ男性の囁き声は、荒い呼吸交じりでした。

「もうすぐ、そっちがいる茂み辺りに着く。けど、そのまま通過するから」
「例の男たちに追われているのですか!?」
「……かもしれない。二人組の男が、オレの後を歩いてきてる」
「特徴は? やせ細った男とニット帽を被った男ですか?」
「うーん……違うと思う。確かめようか?」
「いや。振り向かずに、そのまま進んだ方がいいと思います」
「分かった。そうする。けど、特徴が違うから別人かもしれないよね?」
「そうはいっても、油断は禁物です。男たちの新たな仲間かもしれませんし」
「なるほどね」
「接触はしましたか?」
「いいや。二人組の存在を遠くから見かけただけで、話しかけてないし、話かけられてもない」
「とにかく、極力明るい道を通りながら逃げてください。ご自宅を知られないように、できれば、人がいるコンビニとかに逃げ込んだ方が安全でしょう」
「そうするよ」
「ちなみに、エサやリの女性はいましたか?」
「いや。それを確認する前に、二人組を見つけたから」
「了解しました」
「そろそろ、そっちの前を通るよ!」
「できるだけ、自然な素振りでお願いします」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉