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飼い猫様の窃盗 89

私が予想した通り、コインパーキング付近に待ち伏せしているであろう、電話をかけてきた男性から着信がありました。
それでも、あえて電話に出ませんでした。
焦らすことによって、男性の本性を引き出したかったからです。

一度目の着信後、間髪入れずに二度目の着信が入りました。
数コールを待ってから、私は電話に出ました。

「もしもし……」

私がまだ話している途中で、男性が口を挟んできました。

「今どこですか?」

イラつきが滲む声をさらに煽ろうと、私はとぼけました。

「どちら様ですか?」
「は? さっき電話をかけた者ですよ。コインパーキングで待ち合わせの約束をしたでしょう」
「ああ……」
「は? 『ああ……』って」
「いや、申し訳ないです。非通知でかけてくる目撃情報提供者が、ほかにもいらっしゃるもので……」

少しの間続いた無言に、男性のもどかしさを見て取れました。
作戦通りです。

男性は強めな口調で聞いてきました。

「それで、今どこです? あとどれくらいで着きます?」
「すみません。実は、今から家を出るところでして……」
「は? こっちは親切心から見張っているっていうのに、なぜです?」
「新たな目撃情報電話を頂き、対応していたもので……」
「なんですか、それ……。今、狭い隙間に入り込んでいるこっちの猫が、飼い主さんの猫で間違いないですって。そっちの猫はべつの猫ですよ」
「でも……」
「なんです?」
「新たに目撃された方も、うちの猫で『間違いない』と仰っていて……」
「その人が、『間違いない』という根拠は?」
「驚いたことに、『チラシに写っている写真と同じ首輪をしている』と仰っています」
「は?」

続けざま、イライラを抑制していたタガが外れた男性は、もっともらしいことを述べました。

「その人、暗い夜に突然現れた猫の首輪の色や形を、よく確認できましたね」

その言葉を待っていた私は、間髪入れずに同調しました。

「そうですよね。思い込みや見間違いの可能性が考えられますよね。なのに、『間違いない』と仰るので……」

自分にも当てはまることだと気づいた男性は、自分の失言をごまかすように、不自然さを伴ったやわらかい声音でいいました。

「……まあでも、疑うのは失礼かもしれませんね。飼い主さんのためを思って、せっかく電話してきたんでしょうし」
「仰る通りです。やはり、飼い主である自分の目で確認しないことには、うちの猫かどうか分からないですよね」
「でしょうね。だから、早くこちらに来てくださいよ」
「そうするつもりです。ただ……」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉