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飼い猫様の窃盗 92

S君が敷地内に入って行ったお宅までの道のりで、私が見かけた野良猫様たちは三匹いました。
三匹とも、エサやリの女性が公園でエサをあげている際に、見かけた野良猫様たちでした。
皆の様子からは、お腹が満たされていない、といった印象を感じません。
やはりエサやリの女性は、今日はもう、エサやリを終えてしまったのだと考えることにしました。

捕獲器の設置を快諾して頂いたお宅に近づくにつれ、私は自らの気配を消すことに集中しました。
もしかしたら今、S君は丁度、捕獲器の中に入ろうとしているかもしれないからです。
また、すでに捕獲器の中に入っている状態だとしたら、ゆっくりと近づいてあげなければ余計に怯えさせてしまう、という理由もありました。

あれこれと気を付けながら目的のお宅の門柱前に到着した時点では、辺りは静けさに包まれていました。
周囲に、私を捜し回っている男たちの姿はありません。

……よし! 行こう!

捕獲器の様子を定期的にチェックするために敷地内に入ることは、家主様の許可を頂いているので、私は門柱の扉をゆっくりと開きました。

さてと……どちらから行こうかな……。

捕獲器を設置している庭に行くには、玄関ポーチから右回りに進むか、左回りに進むかです。
右回りで行った方が、庭に早く到着します。

反対に、左回りだと、建物を伝って回り込まなければ庭に到着できないので、右回りよりも距離があり、時間がかかります。
必然、距離が長くなればなるほど、一歩一歩進む度に、足音などを立ててしまうリスクが伴うわけです。
もし今、S君が捕獲器に入ろうかどうか迷っている状態だとすると、足音でこちらの気配を察知されて、庭に私が到着する前に姿を消してしまいかねません。

以上の懸念材料から、私は左回りで庭を目指す選択をするに至りました。
とはいっても、慎重さを失って、いきなり庭に足を踏み入れるのは愚策というものです。
先ずは玄関ポーチに身を隠しながら、庭の様子をそろりと覗きました。

このお宅の庭には本来、センサーライトが設置されています。
ですが、捕獲器に近づいたS君が突然灯った明かりでびっくりしないようにと、家主様はあらかじめ電源を落としておいてくれたので、今日はセンサーライトが点灯することはありません。
それでも、庭には外灯の明かりが届いているが故、まったく見えないということはありませんでした。

片目で覗き込んだ庭には、見える範囲にS君らしき猫様はいないようでした。
ですが、捕獲器を設置している場所は、庭の隅に置かれた物置の陰なので、この場所からは見えません。
私はいよいよ、そちらに近づくことにしました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉