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飼い猫様の窃盗 93

一歩、二歩、三歩と踏み出した時、庭を囲む植木の間から、白っぽい被毛を持った一匹の白猫様が歩いて来ました。

……S君!?

心の中で呼びかけ、その姿を撮影しようとスマフォを手にした私でしたが、よく見れば、べつの猫様でした。
確かに白い被毛で覆われた猫様ですし、首輪も装着しています。
ですが、その首輪は青い柄でした。
また、S君は去勢済みですが、その猫様は未去勢のオス猫様だと確認できました。

これまでの捜索及び寄せられた目撃情報以外の猫様が、この地域にはまだまだいることは想定していたにせよ、です。
一瞬見かけただけでは、この猫様をS君だと思い込み、目撃情報電話をくださる方々がいてもおかしくありません。
今後の捜索の混乱を避けるためにも、今夜中にS君の保護ができることを、私は強く願いました。

そうこうしているうちに、S君に間違われそうなその猫様は、私の存在を知っても警戒心を抱くことなく庭を横切り、隣家の敷地内へと消えて行きました。
捕獲器に気づかず去ってくれたことは幸いです。

私は気を取り直し、歩みを進めました。
四歩、五歩、六歩、七歩……。
辺りの静けさに変化は見られません。

八歩、九歩、十歩……。
十一歩目を踏み出そうと足を上げた矢先です。
手に持ちっぱなしだったスマフォ画面が点滅し、着信を知らせてきました。

サイレントモードにしておいたからよかったものを、万が一着信音がなってしまう状態だったら、夜分故、ご近所にご迷惑をかけてしまうところです。
それに、もし今、S君が捕獲器に近づこうとしていたら着信音に驚き、逃げてしまったかもしれないと肝を冷やしました。

点滅するスマフォ画面の明かりが極力漏れないようにしながら、電話をかけてきた相手を確認すると、エサやリの女性からでした。
先ほど、こちらから何度も電話をしているので、直ぐに応対するべきか迷いましたが、エサやリの女性には、後ほど電話をかけることにし、私はスマフォをポケットにしまいました。
すでに庭の中へ足を踏み入れている以上、捕獲器の確認を優先しようと思ったからです。

私は再度、足を運び始めました。
一歩、二歩、三歩、四歩、五歩、六歩、七歩、八歩、九歩、十歩……。
物置までの距離はあと少しです。

ここからは姿勢を低くして進みました。
物置へ一歩近づく度に五感をより研ぎ澄ませ、わずかな変化をも逃さないように集中力を高めていきました。

そうして、ようやく物置の側面に辿り着いた時、私は捉えました。
物置の向こう側にいる、確かな気配を――

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉