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飼い猫様の窃盗 95

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10。

手を伸ばしてから10秒数えて、私はスマフォを手元に戻し、録画を停止しました。
幸いにして、潜んでいる誰かにバレることはなかったので、静かに短く息を吐きました。
そして、直ちに録画した記録を再生し、気配の正体を確認しました。

……ん!?

映っていたのは、捕獲器を覆うようにしてしゃがみ込んでいる人物の背中でした。
そのせいで、捕獲器自体は見えませんでしたが、私の意識はむしろ、その背中に集まりました。

このシルエットは……。

私を捜し回っている男たちの背中でないことは確実で、華奢な体つきから判断するに、女性だと思われます。
だからといって、一安心とはいきません。
男たちの仲間に、女性がいる可能性も考えられるからです。

それでも、女性は一人でいる様子なので、私は問い詰めることに決めました。

「そこで、なにしているのですか!?」

警告を与えるようにいい放ち、身を隠していた物置から飛び出すと、振り返った女性と、すかさず目が合いました。

「ひぃ!」

女性が上げた短く甲高い悲鳴と同時に、私も驚きの言葉を発しました。

「あっ! えっと……なぜですか!?」
「あんたか! 驚かせるんじゃないよ、まったく!」

気配の正体は、エサやりの女性でした。
なぜ、この場所にいるのだろうと気になり、私は質問を投げかけようとしました。
けれど、それよりも先に、エサやりの女性がいいました。

「そんなことよりも、ほら、これ見て!」

エサやりの女性は立ち上がり、捕獲器を指さしました。
私はいわれるがままに捕獲器を見て、目を大きく見開きました。

「……よっしゃあ!!!!!」

捕獲器の中でちょこんと丸まっているS君を確認した勢いで、思わず歓喜を弾けさせてしまった私を、エサやりの女性が制してきました。

「静かにしな!」
「あっ……そうですよね」

我に返って反省をしていると、エサやりの女性が聞いてきました。

「この猫で、間違いないかい?」
「はい。間違いなくS君です!」
「そうか、そうか。無事でよかったねえ」
「はい!」
「それにしても、この捕獲器を仕掛けたのは、例の”噂”の連中かねえ?」
「いえ、違います。私が設置しました」

私は、この家主様の敷地に捕獲器を設置させてもらった経緯を話しました。
エサやりの女性は無言で相づちを打ちながら、私の話を最後まで聞いていました。

「なるほどねえ。あんた、よくやったねえ」
「いえいえ。頑張ったのは、S君の方ですよ。私はただ、S君を信じて、地道に捜索をしただけです」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉