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飼い猫様の窃盗 97

エサやりの女性は少し考えた後、私に提案なさいました。

「とりあえず今夜は、うちに連れて来るかい?」
「ご迷惑ではありませんか?」
「家の中にはほかの猫もいるから、直ぐに放して自由に過ごさせてあげるわけにはいかないかもしれないけどねえ……」
「双方にとってストレスになりかねないので、むしろ、捕獲器の中に入ったままの方がいいかもしれませんね。少しでも落ち着くように、捕獲器を布かなにかでくるんであげれば尚、理想的です」
「それくらいはお安い御用さ。じゃあ、早速、連れて行こうかねえ」

悪くはないご提案で乗り気になったものの、なにかが引っ掛かる私は、歩きかけたエサやりの女性を止めました。

「待ってください……」
「なんだい?」
「自転車は、どうなされたのですか?」
「ああ、一本裏の路上に停めたままだよ。自転車よりも、歩きの方が後を追いやすかったからねえ」
「まあ、確かに」
「急いで取りに行ってくるから、ちょっと待ってな」

心の引っ掛かりがまだ取れない私は、再び、エサやりの女性を止めました。

「あ、待ってください」
「今度は、なんだい?」
「……お気持ちは有難いのですが、やっぱり、連れて行くのは止めようと思います」
「……なんでだい?」
「リスクです。S君を捕獲器ごとお宅に運んでいる最中に、例の男たちに私が見つかってしまったら、S君はもちろんのこと、そちらにも危険が迫ってしまうかもしれません。それは、私の望むことではないので……。それに、今夜はまだ、公園にエサやりに行けてないのですよね?」
「まあ、まだ、だけどねえ……」

私の心配を逆に気遣ってくれたエサやりの女性は、べつの提案を持ち掛けてきました。

「じゃあ、こうするのはどうだい? こっちは、今から携帯電話を取りに自宅に戻ってから、公園にエサやりに行ってくる。そのついでに、連中がウロウロしてないか見てくるから、あんたは一先ず、ここで猫と待機してな。その間に、どうするかを考えてたらいいじゃないか」
「……実際問題、そうして頂けるなら、私としても助かります」
「任せときな。連中は、こっちがあんたの仲間だってことは知る由もないんだから、大丈夫だって」
「……分かりました。お願いできますか?」
「あいよ」

エサやりの女性は快活に頷いて、庭を出て行きました。

エサやり男性といい、エサやりの女性といい、その親切さに、私は胸が熱くなりました。
だからこそ、必要以上に、お二人を危険にさらすわけにはいきません。
すべてが無事に解決するために、少しでも安全な手段はなんなのか……。
私は、捕獲器に入ったままのS君を見つめました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉