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飼い猫様の窃盗 98

幸いにして、S君はまったく動じる様子もなく、捕獲器の中でじっとしていました。
おかげで、エサやりの女性からの連絡を待つ間、いくつかの選択肢を思いつきました。

思いついたいずれの選択肢も、今尚、私を捜し回っている男たちがいる想定で考えました。
希望的観測に頼って油断をしてしまい、最後の最後で失態を犯したくなかったからです。
なによりも、S君・エサやり男性・エサやりの女性に危害が及ばない選択をしなければなりません。

とにもかくにも、エサやりの女性からの連絡を待つ方が賢明だと判断した私は、ただひたすらに待ちました。

S君にも変化がないまま30分が経過した頃、エサやりの女性から着信が入りました。
電話に出ると、開口一番、エサやりの女性がいいました。

「そっちの様子はどうだい?」
「特段、変わりなしです。S君も大人しくしています。そちらは、どうですか?」
「こっちも無事さ。それと、あちこち見て回ったけど、連中らしき男たちの姿は見当たらないねえ」
「そうですか。公園の猫様たちの様子はどうですか?」
「みんな、相変わらずだよ。来るのがいつもよりも遅くなったけど、なんだかんだ、みんな顔を見せに来たし」
「よかったですね」
「まあね。それで、そっちの猫のこと、どうするか決めたかい?」
「その前に、もう一つお願いごとを聞いてもらいたいのですが……」
「なんだい?」
「エサやりは、もう終わりましたか?」
「あとは、エサを入れた発泡スチロールトレイを回収するだけだよ」
「でしたら、回収後に、公園の出口に向かってもらえますか?」
「どこのだい?」
「どこでも結構です。公園の周りに、路駐している車があるかないかを確認して頂きたいのです」

私は、男たちが乗っていたバンの特徴を伝えました。

「そのバンが停まっていたら、その中に男たちがいる可能性があります。ですので、バンを発見しても、決して近づかないでください。念のため、バンから見えない位置に移動してから連絡を頂ければと思います」
「分かったよ。それで、バンが停まってなかったら?」
「そのままご自宅に帰宅なさってから、電話をください」
「……保護した猫は、どうするんだい?」
「バンの有無によって、適当な手段を講じようと思っています」
「そうかい……。じゃあ、発泡スチロールトレイを回収し終えたら、バンの確認に行ってくるねえ」
「よろしくお願い致します」

電話を切った私は、提げていたショルダーバックから、メモ帳とボールペン、ガムテープを取り出しました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉